くまにちコム 戒名配列の石碑

熊本市南区銭塘町の三町[さんじょう]地区にある石碑が、約500年前の室町時代に地元豪族が建立したものと分かった。文化財関係者は刻まれた戒名の文字配列が珍しいと指摘しており、地元住民らは「地域の宝として守りたい」と意気込んでいる。

石碑は地上高1メートル15センチ、最大幅91センチ。「いぼ取り観音」と信仰を集める観音堂の隣で地中に半分埋まった状態だったが、近くの田添英明さん(67)と友人の上村史朗さん(63)=同市西区=がことし3月に掘り出してみたところ、下半分にびっしりと漢字が刻まれていた。

石碑に詳しい県文化財保護指導委員の前川清一さん(64)=玉名市=が解読した結果、永正15(1518)年4月の建立と判明。阿弥陀[あみだ]如来来迎図と、「香林」の戒名を持つ有力者が生前供養をして現世と来世の安楽を願ったとの碑文が刻まれ、一族とみられる延べ79人分の戒名も並んでいる。

「戒名入りの石碑は15世紀後半から16世紀半ばにかけて県内各地で建立され、多数現存する」と前川さん。ただ、この石碑は戒名を上から下に読ませつつ、最下段の文字だけ右から左に読む配列になっており、「ほかに例がなく、貴重」と声を弾ませる。

石碑は全体が見えるよう据え付け直した。地元自治会は今後、碑文の拓本を公民館に展示するほか、観音堂に解説文を掲示予定。前自治会長の田中正二さん(69)は「石碑の存在はみんな知っていたが500年も前と聞いて驚いた。歴史のロマンを感じる」と話していた。(森紀子)

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