島田裕巳氏 葬儀離れ、戒名離れで寺院に深刻な影響を指摘


島田裕巳氏の近著『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)でも触れたが、 そもそも菩提寺として檀家との交流をほとんどせず、葬式のときだけ高額な御布施や戒名料を取ろうというのでは理屈が立たない。

大阪などでは月命日ごとに僧侶が檀家の家を訪れてお経を上げるなど、いまなお寺は身近な存在だが、 東京の寺院のほとんどは葬儀の数の多さにあぐらをかいている。
今後、葬儀離れ、戒名離れによって深刻な影響を受けるのは必定だ。

とくに高齢者の葬儀には参列者が集まらないため、今後は高齢化とともに簡略化した家族葬が増え、 寺が葬儀で儲けることはますます難しくなる。そうしたお金が末寺を通じて本山に上げられる集金システムは、 すでに崩壊の危機に瀕しているのである。

長い歴史を持ち、伝統に結びついた神社仏閣は、修学旅行客や観光客を集めて拝観料でやっていけるが、 それは全国7万7000ある寺院のごく一握りでしかない。地方の小さな神社は、すでに朽ち果てているところが相次いでいる。

寺院は対策として永代供養墓を作るなどしているが、寺の関係者は「人が集まらずに借金だけが増える」という悩みを抱えている。 高額のお金を払う購入者は、その寺が本当にきちんと供養してくれるのか、住職の「人間性」を厳しく見るからだ。

もともと寺にはサービス業の側面があるが、これからは一層、墓を売るにも参拝者を増やすにも、 一般の人に満足してもらえるようなサービスを提供しなければならない。

※週刊ポスト2012年5月4・11日号